踏みしめて

 カメのように一歩一歩しっかり踏みしめて、前へ進んで生きたいな、と思ってます。

暗黙のルール

 昨年暮れに、とても興味深い状況を体験することが出来ました。以前記事に上げた、集落が存続していくための暗黙のルールを垣間見ることが出来たのです。

 私は弱電関係の仕事を持っていまして、ある集落の共同アンテナに携わっていました。平均年齢が60歳という高齢化した十数件の集落です。そこはある条件の下でしか受信できなくて、電波道の環境変化に敏感に左右されがちな場所でした。十数年にわたり修理を重ね、何とか放送が見られるようにしてきたのですが、いよいよ限界に近づいてきました。

 そこである提案を持ちかけました。皆さんご存じの地上デジタル放送への切り替えです。しかし問題がありまして、現状のままでは地デジすべての放送を見ることが出来ません。それを修理してしまうと既存のアナログ放送の一部が受信できなくなってしまうのです。つまり一度に切り替え作業をしないといけないわけです。それはテレビの買い換えもしくは地デジチューナーの増設を全戸で一度にしてもらうということなのです。一部の放送を我慢してもらわない限り、2011年の7月までに徐々に切り替えていくということが出来ないのです。

 その説明会を暮れに開きました。全戸の方が夫婦や家族で出席し、各戸それぞれの事情があるなか、一戸の方を除いて地デジへの切り替えに賛成しました。私も皆さんが納得いくまで説明をしたので、通常ではこれで決まりだと思うわけですが、ここは違ったのでした。

 説明をした後、それぞれの方の意見交換が行われました。そして2時間くらい議論がされたのですが、やはり一戸の方だけがぎりぎりまで待とうと主張したのでした。結果はその方の主張通りとなりました。

 この時私は、はっ!と思いました。ここの方達は関係をとても大事にしているんだと…。反対した方は決してこの地の有力者などではありません、なのに他の皆さんは逆を選んだわけです。つまり、禍根を残さないことを選んだわけです。未来永劫その地で平和に生きていきたいがための、暗黙のルールを目の当たりにすることが出来ました。

 商売にはなりませんでしたが、とても大事なことを体感できて何かほっとしてしまいました。皆さんはどう思います?

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職業は?(2010-03-12 14:32)

この記事へのコメント :
大切な、お話を読ませていただきました。
何でも、数と多数決でごり押しする政府が「限界政府」で
有ると教えていると感じました。
森町の政治家が良いと思ったことでも、住民の賛同が無ければ大きな力となって発展していけません。
グローバル社会が世界の流れであっても、国民が不幸になることは、有ってはなりません。
先生の対話精神が、民主主義を育てています。
新年早々、温かな気持ちになりました。

電気工事は楽しいですよね。私も、電気物理を学んでいます。雷災をどのように防ぐかがテーマです。
Posted by 鈴木 淳 at 2009年01月06日 20:23
 近年雷災が増えてますね。我々はコンセントを抜いて通り過ぎるのを待つぐらいしかできません、遠いと思っても突然近くに落ちることもあります。是非いい防ぎ方法を見つけてください。
Posted by かめ at 2009年01月08日 08:24
いつも、読むたびにいろいろなことが頭に浮かびます。
政府や経済界は、人を集めて住まわすことが日本を発展させると考えてきた。今の東京の現実は高齢者を「姨捨山」のように新宿区の団地に集めています。そこには、地域の文化も無く連帯も育たず、孤独死が起きています。めんどくさい感じのする地域社会は、逆から見れば人間社会の基本です。一人一人がばらばらになった都会では、「疑る」社会です。心がほっとする時もなく、場所も有りません。だからお金主義になっていきます。
人と人とが話し合える社会を育てていくことが必要と思います。こんな社会を作ってしまった高齢者は、若者から疎んじられても、繰り返し話しかけて行くことが求められています。若い連中は、表現が下手なので自分の気持ちを伝え切れません。忍耐強く聞いてあげることが、若者を育てることだと思います。大変な世の中になったものですね。
Posted by 鈴木 淳 at 2009年01月12日 08:43
確かに都会へ住むことは便利かもしれません。でもその便利さが仇になっているのではないのでしょうか。不便を楽しむことも意識することが大事かと思います。そこには必ず助け合いが存在すると思います。
Posted by かめ at 2009年01月14日 08:53
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