―自立的なコミュニティの創生―
コミュニティビジネス総合研究所
代表取締役所長
細内 信孝 氏
地域間競争の時代を迎えて
わが国は、今まで公共的なサービスのほとんどを国や自治体が行ってきた。しかし、行政
(国や自治体)は大幅な
財政赤字を抱えているので、今後
スリム化を避けて通ることが出来ない。そこで、今まで地域に対して関心が薄かった
住民が、一緒になって生活者として
主体的に地域の
問題解決に関わり合う必要が出てきた。行政は、住民と
パートナーシップを組んで、お互いの出来ないところを
補完しあいながら、地域の問題を解決する時代に入ってきた。そのため、住民が起こす
コミュニティビジネスと連携することが必要だ。
コミュニティビジネスは、スタートアップにある程度のサポートが無いと上手く離陸できない。行政は、政策的に資金の一部補助や業務を
アウトソーシングするなど、
コミュニティビジネスの継続性を
保証していくことが必要である。
地域間競争が激しくなり、住民だけが頑張っても上手くいかないし、行政だけ頑張っても上手くいかない。地域では、行政、
コミュニティビジネス、住民等の力を結集した総力戦の時代を迎えている。こういう
パートナーシップをどうつくっていくかが今後の問題だ。
コミュニティビジネスは住民たちが起こす
草の根事業として、新しい地域経済の担い手になる可能性がある。地域の
人的資源の有効活用ということで、
団塊の世代、又は
社会的弱者の新しい働き場になる。
コミュニティビジネスを通じて、新しい人間関係が形成され、共同や共創を行うことによって、コミュニティの再生にも繋がる。このように、
コミュニティビジネスは、一人の人間が起こす自分おこし、仕事おこしから、健全な地域社会づくりを目指す経営基盤のしっかりした
社会的企業としての側面を持っている。
逗子市の挑戦
全国的に見ると、既にほとんどの都道府県で
コミュニティビジネスの
振興策や
支援制度を用意している。現在、
コミュニティビジネスは、啓発・普及の第1ステージから、
コミュニティビジネスを行う
地域リーダーの育成、支援施設の設置など、第2ステージへと進化する段階にある。
逗子市も平成14年度からコミュニティビジネスの支援策を行ってきた。逗子市役所のホームページでは、次のようにコミュニティビジネスを紹介している。
「コミュニティビジネスは、これまでその多くを行政が担ってきた公共サービスの新しい担い手です。同時に、ボランティアや営利を第一とするこれまでの経済活動とも異なる新しい仕事のスタイルです」
逗子市は平成14年度から平成17年度までの
4年間に渡り、コミュニティビジネス講座を開催し、参加者に
「コミュニティビジネスとは何か」を掴んでもらった。参加者は
コミュニティビジネスの
事業企画書を作成し、それをもとに
「この指とまれ」方式で仲間を集める。市役所は、そのためのお手伝い
(マッチング機能)をするとともに、コミュニティビジネス発表会を開催し、人が集まるきっかけを提供した
(プロデュース機能)。そして日常的な活動の場所などを用意
(コーディネイト機能)し、3つの機能を通じて総合的な
起業支援を行った。こうして誕生した逗子発の
コミュニティビジネスには、育児コミュニケーション、アートコミュニティ“モラモラ”、逗子オーケストラ鑑賞会、ぽかぽかハウス、親子のくつろぎサロン、木のある生活、逗子健康広場などがある。いずれも逗子市が認定する
コミュニティビジネスとしてこのほかにも多数輩出されている。
共同で地域総合力を上げていくことが大切
逗子市のように地域の生活を豊かにするために、コミュニティビジネスを導入されることを提案したい。
ベンチャービジネスは一人で起業することが可能だが、社会的企業としての
コミュニティビジネスは、アモールトーワ、小川の庄、黒壁など、いずれも地域の
共同体で
起業している。地域の共同体が
コミュニティビジネスを起こすと、各人が知恵を出し合うので
リスク分散が可能になり、成功への近道にもなる。もちろん一人でも起業は可能である。また、
コミュニティビジネス(社会的企業)の中で事業に柱を何本か作り、全体で収支の
バランスを図るようにするといい。
英国のコミュニティビジネスは、内装の事業があったり、清掃の事業があったり、警備の事業があったりと、3つの事業の
合算で
収益をトントンにしている。また、黒字事業から赤字事業に
補填をしている。赤字でも地域に
必要な事業はやめない。それが
コミュニティビジネスである。日本では配食サービスだけの
単独事業でやると、どうしても
赤字になりがち。地域に
役立つ生活ビジネスを3つとか4つ作り、環境変化に応じて全体で採算をとっていくということが、
成功率を高める上でのポイントになる。
これからの行政はスリム化せざるを得ない状況になってくるので、こういうコミュニティビジネス、すなわち住民が起こす事業体に
業務委託や
アウトソーシングをすることが必要不可欠になってくる。しかも3年ぐらい
継続して
委託することが肝要である。それと同時に地元にある
企業も
業務委託をする事が大切である。アモールトーワに清掃事業を委託している大手スーパーの例にもあるように、これからは、行政、地元企業、コミュニティビジネス、住民等が地域で一体になって
“共存共栄のコミュニティ”うをつくっていくことが重要である。地域を再生するには、地域を愛する志を同じくするものが
ジョイントベンチャーをつくって、共同で
地域総合力を上げていくということが
戦略的にも必要になってくる。その際、地域コミュニティの仕組みの中で
雇用を創出しようとすることが重要であり、コミュニティビジネスの創生が、地域間競争の激化するわが国の地域社会
(自治体)において必要なものとなってくるであろう。